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六月、京町家の建具替(たてぐが)え 〜2012年6月〜
住まいの衣替え「建具替(たてぐが)え」をご存知ですか?
季節の変わり目に行う「衣服の衣替え」はよく聞きますが、京町家では「住まいの衣替え」つまり「建具替(たてぐが)え」が行われます。

建具替えとは、京都に古くから続く町家にて、季節の変わり目に建具を取り替えることです。建具替えは、夏と冬、年に二回、行われます。
夏の建具替えは、たいてい六月頃、梅雨の晴れ間に行われることが多いようです。冬から春にかけて使っていたふすまや障子をはずし、 夏用の建具に入れ替えることによって、部屋の雰囲気はガラリと変わります。

今回は、どうして建具替えを行うのか、建具替えとはどのようなものか、についてご説明するとともに、季節の移ろいを感じられる京町家の素晴らしさをご紹介できればと思います。
京都は三方を山で囲まれた盆地であるため、夏は蒸し暑く、冬は底冷えが厳しいことで有名です。 鎌倉時代、「徒然草」で兼好法師は次のように記しています。
「家のつくりようは、夏をむねとすべし」
つまり冷暖房の発達していなかった時代、冬の寒さは重ね着をして耐えしのぐことができても、 夏のじめじめとした蒸し暑さはどうしようもありませんでした。
そこで、夏をいかに涼しく快適に過ごすかに重きを置いて、京都の人々は住む家に様々な工夫を凝らしてきました。
その集大成が京町家であり、建具替えです。そこには、五感をフルに活用して涼しさを感じ取ろうとする、京都の人々の知恵があふれています。
夏の建具替えは、冬用の建具を夏用に替えること。涼風を誘い入れ、開放的な空間を作りだすことができます。

まず、ふすまを簾戸(すど 注1)に、障子を御簾(みす 注2)に替えます。畳の上には、籐の網代(あじろ 注3)や 籐筵(とうむしろ 注3)を敷き、直射日光がそそぐ2階開口部には簾(すだれ)を垂らします。
  • (注1)簾戸(すど)とは、
    竹や葭(よし)で作った夏用の障子。
    琵琶湖の葭(よし)で作ったものが好まれ
    葭戸(よしど)ともいう。(ノウション調べ)
  • (注2)御簾(みす)とは、
    厳選した竹を材料として作ったすだれを、鴨居部分から吊り下げたもの。
    一般的には、座敷簾(ざしきすだれ)と呼ばれることが多い。(ノウション調べ)
  • (注3)籐の網代(あじろ)・籐筵(とうむしろ)とは、
    自然素材である籐を材料として作られた敷物(カーペット)。
    あじろは、籐の表皮だけを割りだして織り上げ、裏張りをして仕上げたもの。
    むしろは、籐を棒状にして糸でつないだもの。どちらも、籐独特のひんやりとした感触が特長。何十年と使うほどに表面の艶が増し“飴色”に変化するそうです。
     (ノウション調べ)
実は、この建具替えは体力的に大変きつい作業です。家中のふすまや障子をはずして、蔵へ運び込み、 代わりに蔵から簾戸や御簾、籐の網代などを出してきて決められた場所に納めていく。 そして、仕上げに拭き掃除。大人が数人がかりで、半日ほどを費やして行うそうです。

でも、建具替えの効果は絶大。夏建具が納まったお座敷に座ると、「今日から夏!とスイッチが切り替わる」そうです。
簾戸や御簾、簾は、風を運んでくれるだけではなく、夏の光を涼しげに遮ってくれますつまり、冬から春は障子の白さでほんのり明るかった室内が、 夏建具に入れ替えることで、昼間でも木陰にいるかのように薄暗くなるのです。

籐の網代や籐筵は、足裏にひんやりと心地良い感触を与えてくれます。

また、京町家の造りはできるだけ壁面を少なくして風通しを良くしてあります。町家の玄関から奥まで通り抜ける「通り庭」は風の通り道になっているので、 風鈴を吊るしておくと、涼しげな音を奏でてくれます。

そして、町家の最も奥にある坪庭に水を打つことにより、涼しい風が奥から玄関へすっと通り抜けます。

このように、五感をフルに活用して涼しさを感じ取るための仕掛けが、京町家のあちらこちらに散りばめられているのです。 エアコン操作一つで温度を調節できる現代の生活は、確かに快適ですが、季節の移り変わりに鈍感になってしまいそうです。 京町家での生活は、大変に手間のかかることですが、日ごとに移り行く季節を五感で感じ取ることができる素晴らしさがあるように思えます。

京町家に暮らす小島冨佐江さんは、著書「京町家の春夏秋冬」の中で次のように述べておられます。 「たんに暑さをしのぐだけではなく、夏のひかりを自在に楽しむことのできる豊かさ。夏の贅沢です。 環境工学の先生は、この京町家の夏のしつらいがとても理にかなっているとお話ししてくださいました。 皮膚感覚にうったえかけるもの、視覚を刺激する夏の陽射し、影の対比。また、風のゆらぎ。五感をとぎすませることによる、先達の知恵と工夫の結晶を見る思いがします。」
建具替えを終えると、七月・祇園祭。山鉾町にある町家では、格子戸を取り外して家の中を開け放ち、 所蔵する先祖伝来の屏風や敷物を飾り、祭り見物に来られた方々に披露する「屏風祭り」が行われます。

「屏風祭り」は、京町家の中を見させていただくチャンスです。ちなみに京町家では、夏座敷こそが「ハレの姿」で美しい、と言われているそうです。

来る七月、祇園祭に来られましたら、山鉾だけではなく、屏風祭りにも足を止めていただき、京町家の夏の風情を味わっていただければと思います。

引用文献
「祇園祭山鉾町に暮らして 京町家の春夏秋冬」 小島冨佐江著 文英堂
京町家を体験!
最近では、京町家を改装したお店がたくさんあります。和食・おばんざいはもちろん、 イタリアン、カフェ、ギャラリー、雑貨屋さん、そして旅館もあります。京都へ来られましたら、 ぜひ京町家のお店にもお越しください。落ち着いた雰囲気の中、ほっこりできることでしょう。

京町家に関する参考HP
  • はんなり京町家
    http://www.kyo-machiya.jp/
    京町家はんなり会がお届けする、京町家のお店と京都観光情報のHPです。「町家豆知識」のページでは、 京町家の特徴である「べんがら格子」や「犬矢来(いぬやらい)」「虫籠窓(むしこまど)」などを紹介するとともに、 それらを実際に見たい場合、どこの町家へ行けば見ることができるのか、も紹介されています。 京町家に興味がある方、ぜひ一度ご覧ください。
  • 京都町家資料館
    http://craft.kyoto-np.co.jp/index.html
    「町家の基礎知識」や「町家大解剖」のページでは、詳しい説明文や図・写真・イラスト入りで紹介。 これを読めば京町家博士になれそうです。京町家を体験できるスポットや、季節に応じたおすすめ散策コースなどの情報も満載です。
※本文中、敬称は略させていただきました。
※掲載内容は、2012年6月時点、弊社で調べた情報によるものです。
最新の正確な情報につきましては、各企業・各店舗・その他各団体へご確認ください。
関連リンク
特記事項
  • 2012年6月1日更新