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十二月(師走)を迎えて 京の行事とお番菜 〜2010年12月〜
「京のお番菜(ばんざい)」について
京のお番菜(ばんざい)
京、冬のお番菜いろいろ▲
(左上から時計回りに)おだいとお揚げのたいたん、お菜とお揚げのたいたん、こんにゃくのたいたん、 おかぼのたいたん、ひじきの白和え、(中央は)さつまいもとおねぎのたいたん。 ご飯茶わんや湯飲みに描かれている網の模様は、中風(注1ご参照)にならないおまじないとして、古くから用いられています。
「京のお番菜」という言葉、ご存知の方も多いことでしょう。
「京の」という言葉が付くと、なんだか特別のもののように思われますが、 実はお番菜とは、晴れの日の料理ではなく、毎日の食卓に上るおかずのこと。
ただ「京の」と付くだけあって、いろいろとこだわりがあります。

その代表的なものを二つ、ご紹介しますと…
一つ目。
旬の素材や乾物を上手に使い、手間をかけずにさっと作れるものが多いこと。
二つ目
「何の日に、何を食べる」という、暦や行事とかかわった食生活の決まりごとがあること。

このお番菜、第二次大戦前までは京都で当たり前のように食されてきましたが、戦争が始まり食糧不足の時代になると 「何の日に、何を食べる」という決まりごとを守るのは大変難しいこととなりました。 こうして「京のお番菜」の風習は一度は途切れてしまいます。
戦後、この伝統ある京の食文化の良さをみんなに知ってもらおう、という考えをもった女性たちがあらわれ、 執筆活動などを通じて「京のお番菜」という言葉を復活させました。

(注1)中風(ちゅうふう、ちゅうぶなどと読む):現在では、脳血管障害の後遺症である半身不随、片まひ、言語障害、 手足のしびれやまひなどを指す言葉として用いられている。
(Wikipediaより引用)
随筆家 大村しげさん
京のお番菜(ばんざい) 「京のお番菜」復活に尽力された女性たちの代表的なお一人に、大村しげさんがおられます。
大村しげさんは、大正七年(1918年)生れ。 京の暮らしや味覚を、やわらかな京ことばで描かれた随筆家であり、京料理研究家です。 その膨大な数の著作により「京のお番菜」と言えば大村しげさんの名を思い浮かべる方も多いことでしょう。
私事になりますが、この「京の彩り」コーナー担当の私は知人の紹介で、晩年の大村しげさんとお話しする機会がありました。 京都の伝統文化を紹介なさっている著名な随筆家でおられますから、お会いするにあたって少々緊張しましたが、とてもやさしく話しかけてくださり、 大変ありがたく思いました。京都の生活の今・昔、京都の生活で好きなこと、最近好きになった食べ物・音楽のことなど、様々な話題をゆったりとした京ことばで語ってくださいました。

今回は、大村しげさんの著作の中から、十二月(師走)の京の行事と、それにちなんだお番菜をご紹介します。(参考文献は、本文の最後の方に記させていただきました。)
12月前半
紅葉が終わり、雪虫がちらちらと飛び交い始め、本格的な冬のスタートです。
厄除け・針供養といった行事にかかわるお献立や、体をあたためてくれるお献立などがあります。
ついたち
●小豆ご飯 ●おなます ●にしんこぶ〜みがきにしんと刻み昆布のたいたん
(「たいたん」とは、京ことばで「煮たもの」を意味します。)
このお朔日のお献立は、十二月だけではなく、毎月一日(ついたち)に決まって食べられるものです。
小豆は、貴重かつおめでたい食材です。それを一日に食べる、ということは、新たな一ヶ月が始まるという引き締まった気持ちを表すようです。
だいこ焚き
大根(だいこ)焚き
おだいとお揚げのたいたん▲
千本釈迦堂では、七日と八日の二日間、鳴滝了徳寺では、九日と十日の二日間、中風や厄除けのおまじないで、大根の炊き出しがあります。
千本釈迦堂は丸大根、鳴滝了徳寺は長大根。
どちらも大釜で焚かれ、おいしそうな匂いがあたりにただよいます。
ちょうど、丸大根も長大根も甘くおいしくなる頃。
ご家庭でも、「おだいとお揚げのたいたん(大根と油揚げを煮たもの)」はいかがですか。
大根とだしじゃこをぐつぐつとたき、やわらかくなったら油揚げを入れて、うすくち醤油とほんの少しの砂糖を入れるだけ。とっても簡単、かつヘルシーなお献立です。

◆千本釈迦堂、鳴滝了徳寺ほかで行われる「大根焚き」行事に関する情報はこちら
 まるごと京都ポータルサイト e-KYOTO
 トップページから、中央あたりにある「大根焚き」をクリックしてください。
針供養
●こんにゃくを使ったお献立
針供養
▲針供養
こんにゃくのたいたん
▲こんにゃくのたいたん
針供養の日には、こんにゃくを食べます。
針供養とこんにゃくの関係をご存知ですか?

針供養とは、1年間にたまった折れ針や曲がり針をこんにゃくに刺して針をねぎらう行事。
かたいものを縫うなどして折れ曲がってしまった針を、やわらかいもの(こんにゃく)にさして、針に感謝する、と同時に、裁縫の上達を祈願したそうです。

こんにゃくは、唐辛子を入れてピリ辛にたいたり、白和えにしたりするとおいしいですね。
八のつく日
●あらめとお揚げ(油揚げ)のたいたん
このお献立は、十二月だけではなく、毎月同じように八のつく日に決まって食べられるものです。 十日に一度、あらめを食べることになり、健康に良さそうですね。
12月前半
いよいよ暮れも押し迫ってきました。この一年の総まとめをしつつ、来る年を迎える準備をするときです。 忙しくなりますが、だからこそ体をいたわるためのお献立や行事が入ってきます。先人たちの知恵ですね。
あわただしい年の瀬のなか、「終い弘法」や「終い天神」へ行くのも楽しみの一つ。
どちらの縁日も、一日で十万人以上の人が訪れにぎわいます。
事始め
事始めとは、正月を迎える準備を始めることです。
現代の京都では、この日になるとテレビや新聞などで芸妓さんや舞妓さんがお師匠さん宅にご挨拶に出かける様子が「事始め」として紹介されますので 花街だけの風習かと思いがちです。が、元々は分家は本家へ、お茶やお花のおけいこをしている人はお師匠さんに、 一年間の御礼とこれからもよろしくとご挨拶に伺う風習があり、このご挨拶から事始めは始まります。
そしてこの日から、正月用品を買い整えたり、大掃除を始めたり、一年で一番忙しい期間のスタートです。
十五日
●小豆ご飯  ●おなます  ●いもぼう〜こいもとぼうだらのたいたん
このお献立は、十二月だけではなく、毎月十五日に決まって食べられるものです。
一日と同じように、十五日にも小豆ご飯とおなますを頂きます。
十五日、つまり一ヶ月のちょうど半分が過ぎたときに、一日と同じお献立を頂くことで、
残りの半月もがんばろうと、気分が改まるということです。

そして、「いもぼう」は京都独特のお献立でしょう。
大村しげさんの著作より、作り方を抜粋させていただきました。

@ぼうだら(注2ご参照)を水にもどしておく。
Aこいもをゆでておく。
Bぼうだらをたっぷりの水で水だきして、
 煮上がったらその汁を半分捨て、Aのこいもを入れる。
C砂糖、酒、薄口しょうゆ、濃口しょうゆで味付けし、
 削りかつおを入れて中火でゆっくりとたく。

(注2)ぼうだら(棒鱈):真鱈の干物。海から遠く離れた内陸の京では、流通の発達していない時代、新鮮な魚介類はなかなか手に入らず、 干物がよく用いられました。

ただ、平成の京都では、家庭で「いもぼう」を日常のおかずとして作ることはほとんどなくなってきているように、私(「京の彩り」担当者)には思われます。

◆「いもぼう」を食べてみたい方は、ぜひこちらへ。
京都東山にある丸山公園内に、三百年にわたり「いもぼう」を一子相伝の秘法として受け継いでいるお料理屋さん「いもぼう平野家本店」があります。円山公園を臨む風雅なお座敷で、ここでしか味わえない「いもぼう」を楽しんではいかがでしょうか。
京名物 いもぼう平野家本店の公式サイトはこちら
果ての二十日
昔、十二月二十日は、罪人を処刑した日。
そこで、この日は忌みつつしんで清浄なるお正月のことには手を触れないように、
つまりお正月の準備は控えるようにと言われてきたそうです。
ただ、大村しげさん曰く
「十三日から一週間、毎日押し入れや棚やと掃除をしたり、 出かけたりしていると、ちょうど疲れが出るころで、なんぞにかこつけて休養をせんならん。 そんなとき、果ての二十日はその方便になっていたんやないかしらん。昔の人も、口実を設けて休んではったにちがいない。」
(参考文献Bより引用)
終い弘法
毎月二十一日、「弘法さん」の愛称で親しまれる東寺では縁日が開かれます。
とりわけ一年の最後、十二月二十一日の終い弘法には、
葉ぼたんや南天など迎春準備の品が売られていて、 毎年終い弘法でこれらを買うと決めている人が多くあるそうです。

◆東寺弘法市(東寺出店運営委員会主催)についてはこちら
針供養
●なんきん、にんじんなど 「ん」が2つ付くもの
おかぼのたいたん
▲おかぼのたいたん
一年中で、最も昼が短く、夜が長い日。
この日には、「ん」が2つ付くものを七種類食べると、中風にかからないと言われます。

なんきん(かぼちゃ)、にんじん、れんこん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うんどん(うどん)・・・など。

「ん」とは、器用貧乏の反対の「鈍」、根気の「根」、「運」の3つを意味すると言われます。
また、この日は、柚子湯につかって、無病息災を祈ります。
今年ももう残りわずか・・・。
柚子湯でほっこりしたら、お正月の準備に向かって、ラストスパートです。
終い天神
毎月二十五日、「天神さん」の愛称で親しまれる北野天満宮では縁日が開かれます。
終い弘法と同じように、終い天神でも迎春準備の品が数多く売られています。
また、祝箸、お屠蘇、大福梅(おおふくうめ)などの迎春授与品もあります。

◆北野天満宮の公式サイトはこちら
◆北野天満宮公式サイト内にある「終い天神」はこちら
◆北野天満宮公式サイト内にある「毎月25日の縁日」については、こちら
際の日
●おから
このお献立は、十二月だけでなく、毎月末日に決まって食べられるものです。

おからには、にんじん、さつま芋、ねぎ、もどしたしいたけ、油揚げ・・・など、なんでも細かく切って入れます。煮魚の汁や、肉じゃがの残りなどを入れることもあるそうです。

月末は何かと忙しく、また財布の中身もさびしい頃。そこで、家にあるもの、残ったおかずをなんでも入れて、おからを作るそうです。材料によってお味が変わってくる、楽しいお献立です。
大つわごもり
おけら詣り
おけら詣り▲
(イラスト作成:株式会社ノウション)
大掃除が終わり、
鏡もちやお煮しめの準備もすませ、
「一年中でいちばん気分のよろしいときである。この気分を味わうために、片付けもんやら掃除に精を出してきた。 あとはおそばをいただいて、おけら詣りに出かけるだけ。」
(参考文献Aより引用)

おけら詣りは、大晦日の八坂神社の風物詩。
おけら(キク科の薬草)を粉にしたものをふりかけて、焚かれるおけら火。 この浄火を火縄に受け、その火が消えないように火縄をくるくるとまわしながら、家に持って帰ります。
この浄火を火種にしてお雑煮をたくと、無病息災がかなうとされます。

「おけら火は、からだを清めて、病魔を払うてくれるのんやろう。すこやかでありますように。 一本の細い縄は、去年と今年のかけ橋で、浄火が時を刻んでいく。」
(参考文献Aより引用)

◆八坂神社の公式サイトはこちら
◆八坂神社公式サイト内にある「白朮祭(をけらさい)」はこちら
次回は、この続き。
新春の京都の行事と、行事にちなんだお料理をご紹介します。
京都ならではの白みそ仕立てのお雑煮や、「七草」の日に行われるしきたりなど。
まだまだ知られていない、京都のお正月。どうぞお楽しみに。
先人の知恵が詰まった京のお番菜
今回の「京の彩り」を読んでくださいましたみなさま、ありがとうございました。
いかがでしたか?
えー!? 何日に何を食べると決められているなんて、堅苦しい生活!!
。。。。と思われる方が多いことでしょう。
このことについて、大村しげさんは、エッセーの中で次のようにおっしゃっています。
「一見、わずらわしいようですけれど、実際は、その日はそれでよろしいので、よけいな気を使わずにすみます。 しきたりを守るという古めかしさのなかに、実は、合理的な暮らしの一面をわたしは見るのです。 とにかく十日にいっぺんは必ず海藻(あらめ)をいただくわけですから、からだにもよろしいのではありませんか。」
(参考文献@より引用)
確かに、そうなのです。毎日、食事のお献立を考えるのは、意外と大変なこと。
それが、月の内、何日か、「この日は、○○○を食べる」と決まっていれば、考えなくて済みます。 そして、それが簡単でヘルシーなおかずなら、なおのこと、主婦にはうれしいですね。
先人の知恵がいっぱい詰まった、京のお番菜。大事にしてゆきたいです。
参考文献
@「京のお番菜 おそうざいの知恵」大村しげ著 中央公論社
A「京 暮らしの彩り」大村しげ著 佼成出版社
B「京 台所の詩」大村しげ著 淡交社
大村しげさんについて
大正7年(1918年)〜平成11年(1999年)

京都・祇園にお生まれになり、仕出し料理屋の店を営まれるお父様からは京料理の味を、お母様からは古くから伝わる京都の暮らしぶりを学ばれました。
昭和10年、京都女専(現・京都女子大学)国文科にご入学。
戦時中の苦しい時代を越えて、昭和25年頃から雑誌や新聞に文章を書き始められます。 昭和39年から朝日新聞京都版に秋山十三子氏、平山千鶴氏らと「おばんざい」を連載し、全国に通用する言葉とされました。
「おばんざい京の味ごよみ」「京の手づくり」「静かな京」「京・四季の味」
「冬の台所」「京都火と水と」など数々の著作を発表される一方、料理研究家としても活躍なさいました。
晩年は、インドネシアのバリ島で暮らし、数々の著作を通じてバリの芸能や食・衣料を日本にお伝えになりました。
※本文中、敬称は略させていただきました。
※掲載内容は、2010年11月時点、弊社で調べた情報によるものです。
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※本文中、写真に掲載されている器は、京焼・清水焼 瑞松陶苑より提供いただきました。
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特記事項
  • 2010年12月1日更新